金田一耕助シリーズで知られる推理小説家・横溝正史(よこみぞ せいし)。
誰もが知る有名作家ですが、同じく日本を代表する推理小説家の江戸川乱歩と交流があったことがわかっています。
今回は2人の作風の違い、横溝による代筆、ゴーストライター疑惑、また横溝の著作権は有効なのか見ていきましょう。
横溝正史のプロフィール
本名:横溝正史(よこみぞ まさし)
生年月日:1902年5月24日
死没:1981年12月28日
身長:164cm
出身地:兵庫県神戸市
最終学歴:大阪薬学専門学校(現在の大阪大学薬学部)
横溝正史と江戸川乱歩の違い
まずは横溝と江戸川乱歩の作風の違いについて見ていきましょう。
ちなみに昨晩は、この2冊を読んでました😊
横溝正史ネタからの江戸川乱歩www
19年ぶりに読んだら序盤しか覚えてない😅 pic.twitter.com/xgP1h2MkZu— ドラグーン♯ (@xwgNKQcQh4v9WYf) December 6, 2020
兵庫県に育ち、薬学を学んだ後、実家の薬屋で薬剤師をしていた横溝。
19歳の年に書いたデビュー作『恐ろしき四月馬鹿(エイプリル・フール)』が懸賞に入選して注目を浴びます。
乱歩と接点を持ったのは、1926年、乱歩の招きで上京し雑誌の編集の仕事に就いた時期でした。
編集と創作に明け暮れた横溝は、いつしか乱歩とはライバル関係になっていきます。
2人の作品に共通する特徴は、横溝は金田一耕助、乱歩は明智小五郎といういずれも探偵を主人公にしたシリーズを執筆している点。
それ以外にも、フィクションであるにもかかわらず、作者自身が見聞した事実のように物語を書く手法も似ています。
作風のみならず、共通する立ち位置にいたことも特徴でしょう。
戦前は横溝が編集者として作家の乱歩を支え、戦後は逆に乱歩が編集者となり横溝を支えているのです。
作家として、編集者として、互いに忌憚なく意見を述べ合える関係にあったのでしょう。
横溝と乱歩はお互いを認め合いながらも、時に激しく喧嘩して会わなくなった時期もあります。
しかしそれはプロ同士だからこその衝突です。
常にお互いの作品、動向を気にしながら、本当に相手が困っている時は助けを差し伸べたのでしょう。
さらに2人は、相手をどう驚かせてやろうかと常に気を配っていたに違いありません。
だからこそ松本清張のような社会派推理小説とは異なり、横溝と乱歩の作品は娯楽性を帯びているのでしょう。
作風の違いを強いてあげるとするなら、乱歩の方が変態的性質をあらわにした作品が多い点かもしれません。
『人間椅子』のように、倒錯した変態的愛情を発露させた人物が登場する作品は、ミステリーと言うよりは耽美的文学と言えます。
それに比べると横溝の作品はより緻密で計算された、正当なミステリーの印象がありますね。
感情のままに妖艶な世界を紡ぐ乱歩は、政治経済を学んだ文系出身。
一方見事な計算で理論的な作風を構成する横溝は、薬剤師の経歴がある理系の秀才肌です。
2人の違いは元々の専門科目からもうかがうことができると言えるでしょう。
横溝は代筆家、ゴーストライターだった?
次に横溝が代筆、いわゆるゴーストライターをしていたという情報を見ていきましょう。
横溝は乱歩の担当編集者だった時期、乱歩名義で小説を発表しています。
『あ・てる・てえる・ふいるむ』という作品で、のちに乱歩が自分ではなく横溝が書いたと公表しました。
実質、乱歩のゴーストライターだったことになりますね。
え〜横溝正史って江戸川乱歩のゴーストライターやったことあんの!しかも作品返上してそれきっかけに横溝正史売れるとか!びっくりしすぎて部屋で叫んじゃったじゃないか。すごい話やな〜〜!
— ま⃞み⃞こ⃞す⃞❄️ (@nikumeat) August 27, 2015
しかし横溝はあくまで、自分が小説をどうしても書きたいので、乱歩の名前を使わせて欲しいと希望したということのようです。
乱歩がスランプの時期と重なっているので、彼が頼んだ印象を受けてしまいますが、横溝としては今がチャンスと思ったのでしょう。
結果的に乱歩は横溝が書いた3つの作品を自分名義で発表することを許可。
その後は、横溝が本名で小説家として売れるように後押しを惜しみませんでした。
作品の内容自体は乱歩が書いたと言われても納得できる水準のものだったようで、推理作家としての才能があったことがわかります。
現代であれば一大スキャンダルとして2人ともバッシングされかねませんが、当時はもう少し寛容な社会だったのでしょう。
いずれにしてもスキャンダルと言うよりは、横溝と乱歩の信頼関係を再確認できるエピソードでしたね。
横溝正史の著作権
では横溝の著作権は有効なのでしょうか。
著作権は2023年現在の法律で、作者の死後70年間有効。
横溝は1981年12月28日に亡くなったので、2051年までは著作権保護期間です。
2052年の元旦から、彼の著作権が切れることになるので、青空文庫で『悪魔の手毬唄』などが読めるのはもう少し先。
ゴーストライターとして書いた作品についても、彼の著作権は有効ということになるので、代筆者としては報われた人物と言えますね。
推理小説界の2人の偉人は、切磋琢磨し合って名作を書き上げたのでしょう。
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コメント
横溝正史作品の二次創作を書きたいのですが、誰にどのように許可をもらえばいいのでしょうか。
販売目的ではありませんが、ネットで公開したいのですが。