酒客の開高健、サントリー・トリスウイスキーの傑作コピー。ロマネコンティ小説&釣りとキャビア

花形コピーライターにして芥川賞作家、おまけにお酒・グルメ・釣りに造詣の深い趣味人でもあった開高健(かいこうたけし/かいこうけん)さん。

有名なサントリー・トリスウイスキーのキャッチコピーに懐かしさを感じる人もいるでしょう。

この記事では、お酒を愛した開高さんらしい短編集『ロマネ・コンティ・一九三五年』についてや、世界の秘境を駆け巡った釣り師としての顔、またキャビアに対する情熱についてまとめます。

酒をこよなく愛した開高健の意外な飲み方とは?

芥川賞作家なのに戦場の最前線にまで足を踏み入れ、また釣り師としても多くの釣りファンの心をつかんだ開高健さん。


『裸の王様』『ベトナム戦記』などの小説やルポルタージュ、 「悠々と急げ」をはじめとする名言の数々、 サントリー時代の名コピーなど、その世界は今も多くの人を惹きつけてやみません。

開高健さんは1930年12月30日、大阪府天王寺区で誕生し、大阪市立大学法学部を卒業。

名前の正しい読みは「かいこうたけし」ですが、ご本人が「Ken」とサインすることもありました。

サントリー宣伝部時代はPR誌『洋酒天国』を創刊し、名キャッチコピーで洋酒文化を日本に根付かせた立役者。

ご本人が無類のお酒好きだったことも有名です。

そんな開高健さんが好んだウイスキーの飲み方は、ちょっと意外なものでした。

お気に入りの組み合わせは、マッカランととらやの羊羹・夜の梅。

マッカランは、初めて口にした開高さんに「興奮した」と言わしめたスコットランドのシングルモルトウイスキー。

羊羹は何でもよいというわけではなく、夜の梅とマッカランでなければ絶対にだめなのだそう。

世界中を旅した開高健さんのスーツケースには、いつもとらやの夜の梅がしのばせてあったのかもしれません。

サントリー時代にトリスウイスキーの傑作コピー

サントリー社員だった妻の羊子さんが育児のため退社し、後任として宣伝部に入社した開高健さん。

1961年に大ヒットした、あまりに有名なコピーがあります。

「人間」らしくやりたいナ トリスを飲んで「人間」らしくやりたいナ 「人間」なんだからナ

トリスウイスキーはサントリーが販売した初のウイスキーでした。

開高さんはこの1行で、「うまい、やすい」がセールスポイントのトリスウイスキーを一気に押し上げることに。

語尾にあえてカタカナを使用したのは、誰の文章なのか一目でわかるように特徴を出したのだそう。

クリエイターとしての才能がうかがえるエピソードですね。

余談ですが、トリスウイスキーといえば「雨と子犬」のCMもあまりにも有名。

子犬が京都の街を駆けめぐる1981年のCMです。

同年のカンヌ国際広告映画祭のCM部門で金賞に輝いています。

開高健さんはサントリーオールドでも傑作コピーを残し、退社したあともCMに出演しました。

ロマネコンティのオーナーに絶賛された小説

短編集『ロマネ・コンティ・一九三五年』に収録された同名の小説は、ワインを題材にした小説の中でも屈指の名作と呼び声の高い作品。

二人のワイン通が、期待に胸を躍らせて開けた1935年産ロマネコンティの味に愕然とする話です。

まるで彼らと同じテーブルについているかのような気分になるやりとりが楽しく、ワインを飲む時の主役は人間ということに気づかせてくれます。


またロマネコンティが今なお価値を持ち続けることの理由にも触れていて、1997年にはロマネコンティのオーナーが取材に答えて、世界中のロマネコンティ評の中で最もすばらしいのがこの短編と賛辞を贈りました。

飲むと小説がひとつ書けるくらいに至福のお酒があるとすれば、開高健さんはそれを見事にやってみせたわけですね。

開高健の釣りやキャビアへの情熱

開高健さんは釣り師として、大河アマゾンからコスタリカのジャングル、ベーリング海、さらにはモンゴルまで伝説の大魚を追いかけることに情熱を燃やしました。

「キャッチ・アンド・リリース」という考え方を広めたのも開高さんといわれています。

『オーパ!』シリーズは釣り紀行文の金字塔ともいえる存在。

ひたすら大物を釣りあげることに邁進するその姿は、釣り師のみならず旅に憧れる人のロマンをかきたてたことでしょう。

「オーパ!」とは、驚いた時にブラジル人が発する言葉。

釣り・旅・写真で構成され、ボキャブラリー豊かな文章で再現された紀行文です。

被写体は熱帯の魚や動植物や風景ですから、豊かな色彩にあふれているのも当然です。

食通の開高健さんにはキャビアについてのこだわりもあったよう。

ファンの間では『開高健のキャビア・キャビア・キャビア』という動画が話題を呼んでいるようですが、動画ではご本人が世界中のキャビアを食べ歩き、さまざまな謎と魅力に包まれたキャビアの全貌に迫っています。

ニューヨークではブルック・シールズさんとキャビアを食べるシーンも。


食品としては群を抜くイミテーション品の多さもキャビアならではのものですね。

活動分野が多岐にわたり、いくつもの顔で一流を極めるのは誰にでもできることではありません。

稀有な存在だった開高健さんの生き方に憧れ、胸をときめかせた読者は多かったことでしょう。

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男性作家
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