政界の武闘派として党内の悪しき慣習を壊してきた山崎拓（やまさきたく）さん。
国政から退いた今も政治に対する意欲は衰えていないようです。
山崎拓は片目を失明していた
2009年に国会議員を引退するまで衆議院議員を12期務めた山崎拓さん。
その間、自民党の幹事長や副総裁、防衛庁長官に建設大臣など要職を歴任。
小泉純一郎さん、加藤紘一さんと共に「YKK」と呼ばれていたのは有名な話。
古い政治体制を変えようと力を合わせる3人の姿は新しい政治を予見させるものでした。
同期当選であり席が近かった事から親しくなったというYKKの3人。
ただ、小泉純一郎さんと加藤紘一さんが世襲のエリート議員だった二人に対して山崎拓さんは叩き上げ。
大学卒業後、サラリーマン勤務を経て1967年に福岡県議会議員に。
この時に後の総理大臣である中曽根康弘さんに認められ、1969年の衆議院議員選挙に出馬するも落選。
そして浪人生活を経て出馬した1972年の衆議院議員選挙で見事に当選。
ようやく国政に足を踏み入れる事が出来た山崎拓さん。
国会議員となってからも中曽根康弘さんの寵愛ぶりは変わらず。
首相となりサミットに出席した際にも同行。
さらには各国の首脳会談の場にも同席させ、会談内容の記録と編集、記者団への発表という責務を担わせています。
きっと中曽根康弘さんは山崎拓さんがいずれ日本を背負って立つ政治家になると見抜いていたのでしょう。
だからこそ、各国首脳との会談がどのような雰囲気で行われるか早々に経験させたのでしょう。
生まれ持った政治手腕に首相の後ろ盾が加われば怖いものはありません。
山崎拓さんはメキメキと頭角を表し自民党だけでなく野党にも名と顔を知られる存在となりました。
この活躍ぶりが多くの非世襲議員に希望を与えた事は間違いないでしょう。
今の国会議員の中にも影響を受けて議員を志した人もいるかもしれません。
そんな山崎拓さんですが幼いころはかなりヤンチャだったそうです。
喧嘩なんて日常茶飯事。
ヤンチャが過ぎたのか小学3年生の頃には遊んでいた時にガラスの破片が刺さった事で左目を失明してしまいます。
隻眼となった事で様々な苦難にも見舞われたそうです。
それでも人一倍の負けん気でハンディキャプを乗り越え、日本を代表する政治家に。
まるで立志伝の主人公のような人生を歩んできた山崎拓さん。
今も多くの人々に慕われるのも納得ですよね。
政治家を引退した今も事務所は健在
囲碁と柔道、野球が趣味だという山崎拓さん。
事務所ソフトボールチームを組んで定期的に試合をしていた時期も。
政策の勉強や密談など部屋に籠っている印象が強い政治家。
それだけにたまには思いっきり体を動かしたくなるのでしょうね。
逆に言えばそれ以外の時間は身も心の政治に捧げていたということ。
もはや政治は生活の一部であり人生の全てと言っても過言ではないでしょう。
ただ、それだけ必死にならなければ叩き上げから副総裁まで上り詰める事は出来なかったかも。
そんな山崎拓さんは国会議員を引退しても頭から政治が離れる事は無い様子。
その証拠に今も福岡に事務所を構えて政治活動を継続。
国会議員による勉強会の講師に招かれる事も少なくありません。
きっと多くの人々に必要とされている事も政治活動を続けられる要因となっているのでしょう。
引退した後も多くの政治家に影響を与え続ける山崎拓さん。
きっと身体が動く限りは日本がより良くなるために尽力してくれる事でしょう。
山崎拓は二度も落選していた
1972年から12期に渡って国会議員を務めてきた山崎拓さん。
これだけの大物政治家なら選挙に受かって当然、と多くの人が思うはず。
ところが過去に2度も落選を経験しているんです。
最初に落選したのは2003年11月の衆議院議員選挙。
当時、副総裁を務めていた山崎拓さんが落選した原因は女性スキャンダル。
2001年4月には自民党の幹事長に就任。
これからますます国政で影響力を発揮していくと誰もが思ったはず。
ところが2002年に元ホステスが10年に渡って愛人関係にあったと暴露。
さらには赤裸々な写真や音声を録音したテープの中身まで公開。
その後も別の女性との問題も次々に報じられた事で批判の的に。
ただ、女性スキャンダルと政治家としての手腕は別、とばかりに2003年9月に副総裁に就任。
ですが逆風が吹き止む事はなく、同年11月に実施された選挙で落選してしまいます。
それまで31年に渡って守り続けた議員の座を失った山崎拓さん。
議員ではなくなった事もあり副総裁も辞職しています。
並の議員であれば国政に返り咲く事は不可能と言えるほどのスキャンダル。
ですが、そこは叩き上げから議員としての地位を確立した山崎拓さん。
それから2年後の衆議院議員補欠選挙で見事に当選。
国政の舞台に返り咲くと拉致問題解決を目指して北朝鮮を電撃訪問するなど汚名返上の活躍ぶり。
やはり政治家は政治で注目を集めるのが一番。
世論の見る目もあっという間に変わった事は間違いないでしょう。
その後も山崎拓さんは地道にコツコツと実績を積み上げる日々。
そして迎えた2009年の衆議院議員選挙。
当時、首相を務めていた麻生太郎さんの支持率が急落していた事もあり、それまで野党だった民主党が大躍進。
山崎拓さんもその煽りを受けてしまい再び落選。
当初は次回の参議院選挙への出馬を検討するも自民党の定年制度により叶わず。
そして2012年に正式に議員を引退する事を発表する事となりました。
今でも女性スキャンダルで足元をすくわれなければ首相になる可能性もあったと言われる山崎拓さん。
政治と同じく私生活も真摯だったら、と思わずにはいられません。
かつては派閥を設立するほどの政治家だった
2009年の選挙で惨敗し野党となった自民党。
その時に悪しき体制からの脱却として打ち出したのが「派閥解体」でした。
ところがその後も派閥による数が物を言う体制は変わらず。
自民党総裁選でも毎回、どの派閥がどの候補者を支持するかが注目を集めていますよね。
なかでも有名なのが最大派閥である細田派や麻生派、竹下派に二階派。
これらは首相や閣僚を多く輩出する名門派閥として知られています。
ただ、現在(2023)の派閥の多くは古くに立ち上げられた派閥。
過去の大物政治家が立ち上げた派閥を現在の有力政治家が継承したにすぎません。
そんな中、自ら派閥を旗揚げた山崎拓さん。
約40名の政治家が所属する中堅の派閥であり、特に憲法の改正に熱心な事で知られていました。
派閥を立ち上げるという事は多くの政治家に慕われているという何よりの証拠。
決して派手さはない山崎拓さんですが、政治には誠実で堅実な姿に惹かれる人が多かったのでしょうね。
山崎拓さんが政界を引退後、派閥を率いているのは石原伸晃さん。
所属議員は全盛期の4分の1と正直、寂しさは拭えません。
それでも内閣府特命担当大臣や国会対策委員長など要職に就く議員を輩出。
現在も変わる事なく派閥の存在感を示し続けています。
山崎拓が次期総裁に推すのは石破茂
2019年11月20日に首相の通算在職日数記録を打ち立てた安倍晋三さん。
翌年の8月24日には連続在職日数記録も更新。
首相としての成果には疑問の声も少なくはありません。
ただ、記録にも記憶にも残る首相となった事は間違いありません。
このように長年に渡って首相である安倍晋三さんを中心に回ってきた日本の政界。
その首相が交代となると政界が賑やかになるのは当然のこと。
長年、官房長官を務めてきた菅義偉さんが首相となったのは規定路線。
そのため注目を集めているのが、その次の首相。
次期首相の座を巡って激しい戦いや水面下での交渉が既に繰り広げられています。
首相候補として数名の議員の名前があがる中、山崎拓さんが推すのは石破茂さん。
2018年と2020年の自民党総裁選の際にも「次期首相にふさわしい」とコメントしています。
これほど強く推す理由は石破茂さんのスローガン「正直、公正」と危機管理能力の高さを評価してのこと。
また、何度も総裁選に立候補している事も高評価に繋がっているようです。
きっと総裁選で自らの理想を訴え続ける姿に心を打たれたのでしょう。
エリート議員に立ち向かう姿にかつての自分を重ねている所もあるのかもしれません。
政界だけでなく国民にも根強いファンがいる石破茂さん。
ですが、山崎拓さんのエールが何よりも力になっている事でしょう。
麻生太郎への苦言が大きな話題に
財務大臣や外務大臣、総務大臣など長年に渡って国家の中枢で指揮を執ってきた麻生太郎さん。
2008年には自民党総裁および総理大臣に就任。
また、親族には政治家や実業家が多数。
祖父は元首相の吉田茂さんで岳父の鈴木善幸さんも元首相。
まさにエリート中のエリートと呼べる存在。
政治家になるために育てられたと言っても過言ではありません。
それだけに庶民との肌感覚の違いによる失言が多い事はあまりにも有名。
首相として臨んだ2009年の衆議院議員選で自民党が惨敗したのも失言の数々が原因と言えるでしょう。
そんな麻生太郎さんは叩き上げの山崎拓さんにしてみれば最も嫌いなタイプの政治家。
それは2007年の総裁選で敷かれた麻生包囲網に山崎派が参加した事からも明らか。
また、「浮世離れした政治家」、「常識が欠けている」と苦言を呈した事もありました。
庶民の生活に寄り添い、苦しむ人々を救うのが政治家の仕事。
庶民を見下すような政治家により良い国を作れるとは思えません。
山崎拓さんのように国民と同じ目線で物事を見られる政治家が一人でも増える事を望むばかりです。
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