ショートショートの天才と称されてブームを巻き起こしたSFの巨匠・星新一(ほししんいち)さん。
数えきれないほどの作品群はすべてが代表作ともいわれていますね。
星作品が時代を超えて読み継がれ、面白いと評される理由について掘り下げていきます。
また著作のイラストを多く手がけた和田誠さんをはじめ、文豪・森鴎外との関係、手塚治虫さんに寄せた話題の追悼文についてもお送りします。
天才・星新一のショートショートはなぜ面白い?
ショートショートという形式を確立し、それを日本に根づかせた星新一さん。
ショートショートとは、その名の通り原稿用紙20枚以内にストーリーをおさめた極めて短い小説のことです。
短編小説より早く読める、いわばエッセンスが凝縮された作品ですね。
長さの制約がある中で発想の面白さを生かし、伏線を散りばめて見事なオチをつけるパターンは星さんの御家芸。
作品は幅広い読者層を獲得していますが、とりわけ小中高生からの支持は絶大です。
平易な文章や教科書に採用されていること、また暴力・殺人・性の描写がほとんどないことも大きな理由でしょう。
生涯で発表したショートショートは1000編以上。
物語をコンパクトにまとめ、質を落とさず1000編を超える作品を創作するのは誰にでもできることではありません。
ストーリーのアイデアが枯渇せず、次から次へ良質なショートショートを書き続け、ジャンルとして定着させた力量はやはり天才といえるでしょう。
父が本好きで家には何千冊もの本があった。私は父のコレクションの中にあった星新一先生の本を小学生の時に読み漁り、未来を無限に想像した。自動走行車や3Dプリンタ、ネット広告等、あの頃は空想の物語でしかなかったが今は現実の世界にある。不思議な感覚だ。
#私と本との出会い #星新一 pic.twitter.com/jAtEQoQvLO— May🇺🇸🇯🇵 (@Mew2Meow2) January 31, 2021
星新一さんのショートショートが面白いと絶賛され、世界中で愛読されているのは、いつの時代にも通用する普遍性によるところが大きいと思います。
人間や物ごとの本質を冷静な視点でとらえた寓話的な物語が多いことも普遍性のひとつでしょう。
また折に触れて「ダイヤルを回す」などという古い表現を時代に即した言い回しに改訂してきました。
星作品の中には、未来を予見したかような物語があるのもつとに有名。
『声の網』ではインターネットの出現を思わせるネットワークのつながりを描き、『おーい でてこーい』では大量消費社会を暗示。
近未来に到来する事象を予測していたかのようですね。
こうした深い見識も星新一さんの天才性を表しているといえるでしょう。
自分のナンバーワンを選ぶなら、やっぱり『声の網』かな。
1970年代の作品ながら、「インターネットが普及した社会」を予言していたかのような内容が、とてもリアルに描かれているスゴい作品。
— 猫まんじゅう (@Kuronekomanju) September 26, 2019
星作品のイラストを多く手がけた和田誠
2019年10月7日、肺炎のため83歳でこの世を去った和田誠さん。
イラストレーターとして広く知られていますが、『麻雀放浪記』をはじめとする映画監督やエッセイストなど活動は実に多彩でした。
夫人は平野レミさんです。
今日の「あさイチ」のゲストは平野レミさん。素敵な家族写真^ ^。真ん中には和田誠さんの姿が♬。#和田誠 #平野レミ#あさイチ #NHK pic.twitter.com/VuyBhnMOoi
— りくえくま (@rikue_2021pc) July 2, 2020
『週刊文春』の表紙を40年以上にわたって担当した和田誠さん。
星作品の装丁や挿絵は和田誠さんのほか、真鍋博さんも数多く手がけています。
それぞれに魅力があり、ファンによって好みも分かれるようですが、シンプルな線によるユーモラスな人物画でおなじみの和田誠さんとは名コンビだったという声も多いですね。
平野レミの旦那さんの和田誠は、星新一の表紙を描いてたのか~
今、気づいたのでした☺️#平野レミ #和田誠 pic.twitter.com/hyHXO5PSkr
— レチノイン酸とR-1 (@WhiteMice_R1) July 3, 2020
星新一の大伯父は森鴎外
明治・大正時代の文豪・森鴎外は、星新一さんの母方の大伯父にあたります。
歌人で翻訳者の祖母・小金井喜美子は鴎外の妹でした。
文学を好んだ喜美子は兄の蔵書を読み、和歌や文章を添削してもらっていたそうです。
鴎外が他界して4年後に誕生した星新一さんは18歳まで祖父母と同居しており、喜美子が歌を声にだして推敲しているのを子守唄がわりに聞いて育ちました。
また祖母の本棚にあった鴎外の文学に親しみ、影響を受けたといいます。
偉大なる大伯父と同じ作家という肩書を持ったわけですが、確実に比較されるであろう「孫」ではなく、「妹の孫」というワンクッションおいた関係は絶妙な距離だったかもしれません。
星新一が手塚治虫への追悼文で怒りをあらわに
2018年2月、あるツイッターユーザーが星新一さんによる手塚治虫さんへの追悼文を投稿して反響を呼びました。
手塚治虫さんは1989年に、星新一さんは1997年に逝去しています。
投稿者のツイートによると、手塚先生が亡くなった時に寄せられた追悼コメントはどれも名文だったけれど、なかでも星新一さんの怒りの文章が印象に残ったとのこと。
いったいどんな怒りの文章だったのでしょう。
星新一さんは「文化の価値」と題して、手塚治虫さんの功績に対する政府の過小評価を嘆き、日本は文化の価値を見極める力がない国と断じていました。
この追悼文には「そのとおり」「星先生らしい追悼」「かっこいい」と賛同の声が続出。
ちなみに手塚作品『ワンダースリー』の主人公・星真一のネーミングは星さんにちなんだもの。
アニメ放送で星真一が人気になったことがきっかけで星新一さんの存在を知り、ファンになった人も多いようです。
意欲的に作品を執筆し、時代のギャップを感じさせない独自のスタイルを構築した星新一さん。
読書の楽しみに目覚めたきっかけが星新一さんのショートショートだったという人は多いのではないでしょうか。
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