「サヨナラ、サヨナラ、サヨナラ」の挨拶でおなじみだった、日曜洋画劇場の解説者・淀川長治(よどがわ ながはる)さん。
私生活では、晩年はホテル住まいだったということですが、本当なのか確認しましょう。
また北野武さんの作品、大ヒット映画『タイタニック』、チャップリンの作品に対する各評価をチェック。
トレードマークだったメガネの情報まで見ていきましょう。
淀川長治のプロフィール
愛称:ヨドチョーさん
本名:淀川長治
生年月日:1909年4月10日
死没:1998年11月11日
身長:不明
出身地:兵庫県神戸市
最終学歴:日本大学法文学部美学科予科中退
淀川長治、晩年のホテル住まい
淀川さんは亡くなるまでの11年間を、全日空ホテルで暮らしていました。
病気で入院し、退院後に一時逗留したことがきっかけでホテルでの生活をスタートさせたのです。
ほかにも山田五十鈴さんや伊集院静さんなど、ホテル暮らしをしていた有名人は多数います。
高級ホテルの一室で、身の回りのことはコンシェルジュにやってもらう優雅な生活に、憧れる人も多いのではないでしょうか。
かつて淀川さんのホテル暮らしの様子が、雑誌「PEN」の「究極のダンディズム ホテルに暮らす」で紹介されました。
さすがは圧倒的な知名度を誇る映画解説者らしく、淀川さんはホテルでの生活をゆったりと満喫していたそうです。
ホテルの部屋で昼寝し、夕方から横浜で買い物や、カフェでの食事を楽しんでいました。
セレブにふさわしい優雅な生活ですね。
ただ姪の淀川美代子さんによると、淀川さんはホテル暮らしを楽しみながらも、心の中に「孤独もあったのでは」とのこと。
生涯独身だったからこそ、自宅での孤独な生活に耐え切れず、ホテルで晩年を過ごすことにした可能性はありそうですね。
映画を愛し、ホテル暮らしを満喫した生涯。
言いようのない孤独を振り払うように、とことん自分の好きなものを追求し続けたのでしょう。
淀川長治は北野武を絶賛
淀川さんは「どんな映画にも必ず良いところがある」という精神で、駄作と呼ばれる映画についても真摯に解説していました。
しかしそれはあくまでも、お茶の間の人々に見せる一面でしかなかったのでしょう。
きっと本音では、「つまらない」と言いたくなる作品も解説してきたはずです。
では淀川さんが本当に好きだった作品と、実は嫌いだった作品について見ていきましょう。
本当に評価していたのは、北野武(ビートたけし)監督の作品でした。
『HANA-BI』男、命がけで愛している。嫁さんも信じきっている。夫が命がけで愛してくれていることも知っているから、安心している。だからふたりは、黙って、黙って、ただ一緒にいる。この黙っているところが、やっぱりたけしの映画、たけしの感覚。『新シネマトーク』(1998、淀川長治) pic.twitter.com/l1Zey4LjTj
— 北野武、あるいはビートたけしbot (@TK4bot) June 18, 2017
たけしさんの監督デビュー作は1989年の『その男、凶暴につき』です。
本作を観た淀川さんは、「たけしさんはサッと感覚を出すのね。ダラダラ出さないのね。感心した」と評価していました。
2作目の『3-4X10月』も大絶賛。
「たけしさんは黒澤明と共に日本映画の収穫」とまで評価しています。
さらにたけしさんの代表作『キッズ・リターン』を「邦画ベストテンをやるなら、今年の1位」と語りました。
映画解説者の枠を超えて、一個人として北野作品をこよなく愛していたのでしょう。
たけしさんは、自分を評価してくれた淀川さんの誕生会に参加するなど、交流を深めていたそうです。
映画人同士として、まさに相思相愛の関係だったのでしょう。
淀川長治はタイタニックを批判
北野作品を絶賛していた淀川さんですが、反対に批判した作品も見ていきましょう。
淀川さんが批判したのは、ジェームズ・キャメロン監督の超大作『タイタニック』です。
誰もが知る大ヒット作品ですが、淀川さんは本作のどこが気に入らなかったのでしょうか。
1997年11月18日付の産経新聞の夕刊では、良い点と悪い点のいずれにも触れていました。
レオナルド・ディカプリオさんとケイト・ウィンスレットさんのラブロマンスとしてはそれなりに高く評価。
ただし「タイタニックの悲劇」という点では、ラブロマンス要素を出し過ぎたため、いまいち盛り上がらなかったといいます。
さらにテレビ番組に出演した際、1997年の大ヒット作品である『タイタニック』と『もののけ姫』について質問されたそうです。
すると淀川さんは『タイタニック』には触れず、『もののけ姫』の方ばかりを絶賛。
司会者が「『タイタニック』はどうです? 僕は泣きました」と質問しました。
それに対する返答は「『タイタニック』で泣いたなら、あんたがバカです」だったといいます。
淀川長治、テレビでも凄かった。司会に「最近の映画はどうですか?もののけ姫とかタイタニックとか」と聞かれて、もののけ姫を褒めてばかり。司会が「タイタニックはどうですか? 僕は泣いたんですが…」と聞いたら、「タイタニックで泣いたぁ? そりゃアンタがバカなんだよ」と答えて司会が凍りついた
— dragoner (@dragoner_JP) October 17, 2018
いつにもまして毒舌を展開する淀川さんの様子から、『タイタニック』が好きではなかったことがうかがえますね。
どうやら、あまり超大作映画が好きではなかったのかもしれません。
『アラビアのロレンス』では主演のピーター・オトゥールさんを褒め、『タイタニック』ではディカプリオさんを褒めました。
つまり作品自体を気に入らなかった場合は、主演俳優の色気の方に注目していたのかもしれませんね。
淀川長治はチャップリン好きで雑記帳を執筆
淀川さんが大ファンであり、実際に交流を深めた相手が、喜劇王チャップリンです。
#おは戦30410md 🍩
Twitterお友達おはよう😃皆は映画好き?
1909 4 10 淀川長治誕生
日曜洋画劇場観てた
チャップリン好きで数多くの映画を
紹介してくれたね
"私はいまだかつて嫌いな人に会った事がない、好きになる事がどんなに人を
助けるか知っている"さよならおじさん pic.twitter.com/knWHSBgkPz
— しみずみわこ🍎 (@tenpuracyan) April 10, 2021
言わずと知れた偉人であり、さすがの淀川さんもチャップリンに対して文句を言うことはなかったでしょう。
筆者も淀川さんの著作を参考に、彼がおすすめするチャップリンの映画を観た時期があります。
『黄金狂時代』『独裁者』『ライムライト』などいずれも名作ですが、淀川さんの紹介文を読まなければ観ることはなかったでしょう。
淀川さんはチャップリンへの愛を吐露した著作『私のチャップリン』を発表しています。
自身は本書を「伝記」ではなく「チャップリンの雑記帳」と称していました。
あまりにもチャップリンが好きで尊敬しているため、理路整然とした文章を書けなかったそうです。
「チャップリンは私の命」とまで語っています。
何か月もかけて何とか完成させたという本書。
しかし苦労の跡はうかがえず、淀みない筆致でチャップリンの魅力を余さず語り尽くしました。
淀川さんの著作を読むと映画の知識が身に付くだけでなく、彼の好みまでうかがえる点が、非常に面白いものですね。
淀川長治のメガネはブロータイプ
淀川さんのトレードマークといえば、大きな黒縁眼鏡です。
小松政夫さんが上部に可動式の太い眉毛が付いたメガネをかけて、淀川さんの物真似をしていたこともありましたね。
小松政夫の淀川長治@retoro_mode pic.twitter.com/6e8ZG6d86N
— JUNK (@xmbhwfqdx) November 6, 2019
淀川さんが愛用していたメガネは、ブロータイプ(サーモント)と呼ばれる、一昔前の型でした。
太い縁が特徴で、「ブロー」つまり「眉毛」が薄い人が、それをカバーするために使うのに適したモデルです。
ブローメガネ最高👴
いつかアメリカンオプティカルのヤツが欲しいでしゅ… pic.twitter.com/UBimIjhf9P
— ヒモ太郎🔴(飯テロパチンカス) (@pachinkas_taro) July 26, 2021
淀川さんは眉毛が太かったにもかかわらず、わざわざ眉毛を強調するようにブロータイプを使っていたのですね。
きっと自身の立派な眉毛を気に入っていたのでしょう。
だからこそ眉毛をお笑いのネタにされることすら、楽しんでいたのかもしれませんね。
小森和子の養女は晴子。若い頃の男性遍歴、アランドロンに忠告。死因と謎の晩年
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