夏目漱石のイギリス留学、ロンドンでの生活。英語力と勉強法。留学の影響とは

『吾輩は猫である』や『こころ』で知られる夏目漱石。

文豪のイメージが強いですが、作家になる前は英語教師でした。

今回は漱石の留学の詳細、イギリス、ロンドンでの生活に迫ります。

また英語力と英語勉強法、留学体験が与えた彼への影響を見ていきます。

夏目漱石のプロフィール


本名:夏目金之助

生年月日:1867年2月9日(慶応3年1月5日)

死没:1916年12月9日

身長:推定159cm

出身地:牛込馬場下横町(現在の東京都新宿区喜久井町)

最終学歴:帝国大学英文科(現在の東京大学)

夏目漱石の留学。イギリス、ロンドンでの生活

漱石は明治33年(1900年)5月、第五高等学校の教師だった時、文部省よりイギリス留学を命じられます。

期間は2年間で、目的は英語教育法の研究でした。

同年9月8日に横浜港から留学へ出発。

パリを経て、10月28日にイギリスへ到着しています。

漱石はロンドン大学で、現代文学の講義を聴講。

しかしとくに興味がわかず、4か月ほどで聴講を辞めてしまいました。

そんな中、せっかく留学に来たのだから、読んだことのない有名な本を読破しようと決意。

しかし1年後、読み終えた本の数が少ないことにショックを受けたそうです。

やがて漱石は英文法や英文学を学ぶ意義を見出せなくなり、神経衰弱に陥りました。

さらに研究資金は書籍代に消え、常に資金不足だったそうです。

ビスケットで飢えを紛らわしながら、徐々に精神を疲弊させていきました。

1901年(明治34年)、化学者だった池田菊苗と同居した結果、彼に刺激を受けて研究意欲が再燃。

一念発起し下宿へこもり、研究に没頭します。

研究に邁進するあまり、他の留学生との交流機会が減り、文部省への報告書を白紙で送るようになりました。

結果的に精神をすり減らし、再び神経衰弱に陥ります。

文部省内に「夏目発狂」の噂が流れた結果、明治35年(1902年)に漱石は帰国を命じられました。

12月5日、ロンドンを出発し、帰国します。

帰国船に、たまたま精神科医の斎藤紀一が同乗していたため、漱石の親族は「彼の精神病が悪化した」と考えたそうです。

漱石は国費留学を果たしたものの、「神経衰弱」を患って帰ることになりました。

彼は元々、神経質で生まじめな性格だったため、留学先で必要以上に思い悩んでしまったのでしょう。

夏目漱石の英語力、勉強法は?

散々な結果だったとはいえ、イギリス留学を国から命じられるほどの英語力はやはり高かったはず。

漱石が実践していた英語勉強法は、「多読」と「音読」でした。

「多読」は英語の長文を、単語の意味がわからなくても、辞書は引かずにひたすら読みます。

「音読」は発音練習として、英文詩を声に出して読むのです。

論理的思考が必要な文章は「多読」、詩のように感性で味わう文章は「音読」に向いているとのこと。

当時はオンライン英会話が存在しない明治時代。

だからこそ漱石の英語学習の土台は、「書籍を読むこと」だったのでしょう。

英語の読解が苦痛ではない人は、彼のやり方を実践すると効果が出るかもしれません。

ただし古典的な方法のため、実戦的な英会話を学びたい人は、英語動画の視聴やシャドーイングの方が効果的でしょう。

留学体験の影響

イギリス留学は、漱石にどのような影響を与えたのでしょう。

ロンドンで精神を病んだ彼にとって、留学期間は「もっとも不愉快の2年」だったそうです。


当時、ロンドンには地下鉄が開通しており、技術が発展していました。

しかし漱石は、イギリスの貧民層が多い地域も目にしており、産業発展の限界を痛感します。

結果的に彼は、日本が西洋の文明化を真似しようとしていることに、違和感を抱いたのでしょう。

こうして彼は西洋文化の限界を説き、文明批判を始めるのです。

留学の影響で西洋文明を批判し始めた漱石。

彼の主張は、作品にも反映されています。

『吾輩は猫である』には、西洋風に着飾る日本人を批判する場面がありました。

留学は漱石にとって、「不愉快な体験」でしかなかったかもしれません。

しかし彼は留学によって、西洋文明の限界に気づけたのです。

主張は作品にも反映され、日本の「西洋化批判者」という彼の地位を確立させました。


夏目漱石が偉大な文学者である理由。

それは彼が精神をすり減らしながらも、文明を批判する客観的視点を持ち続けられた点にあるのでしょう。

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