あまんきみこは現在(2023)も作家。夫は日本新薬の会長。家族は子供2人。夢を追う生涯&作品の特徴

子供向けに戦争の悲惨さを訴えた『ちいちゃんのかげおくり』で知られる児童文学作家あまんきみこさん。

91歳を迎えた2023年現在も現役で活動を続けています。

今回はあまんさんの近況、夫と家族の情報を確認し、夢を追い続ける生涯に迫ります。

併せて、作品の特徴も見ていきましょう。

あまんきみこのプロフィール

本名:阿萬紀美子

生年月日:1931年8月13日

身長:不明

出身地:旧満州撫順市

最終学歴:日本女子大学家政学部児童学科通信教育部

あまんきみこは現在(2023)も現役作家

あまんさんは2023年現在、京都府で暮らしながら、現役の作家として活動しています。

2021年2月、岩波書店のWebサイト「web岩波」でインタビュー記事に登場。

前年に出版された著作『服のはなし 着たり、縫ったり、考えたり』にちなみ、洋服に関する実体験を振り返っていました。


このとき「人間は幼年・青年・老年と各時代が年輪のように重なり、全部を抱えている」と語っています。

かつて抱いた感情が、当時はうまく言葉にできなかったまま、胸の奥に残っているのだそうです。

「服も同じで、着ていた服を思い出せば、当時の気持ちまでよみがえる」と続けました。

最近は黒い服を着ているそうですが、きっかけは夫と死別したことでした。

1989年に夫が亡くなってから、黒い服を着ると気持ちが落ち着くのだそうです。

ロシアの劇作家チェーホフの言葉を借りれば「人生の喪服」といったところでしょうか。

感情も洋服も、自分で選択しながら生きているように思えますが、実は周囲の人から大きな影響を受けているのですね。

あまんきみこの夫は日本新薬の会長

あまんさんが20歳で結婚した相手は、4歳年上の阿萬英明さんです。

夫の転勤後は東京都三鷹市で暮らしていました。

後年、英明さんは京都に本社を置く日本新薬株式会社の代表取締役会長を務めています。

この時期には夫婦で京都に転居していたのでしょう。

1989年に英明さんは70歳で逝去しました。

66歳だったあまんさんは4年後、夫の享年に追いつき「困ってしまった」といいます。


理由は「主人の年齢を超えてしまうから」

あまんさんの恥じらう少女のような考え方がかわいらしいですね。

まだまだ夫の年齢を超え続けて、夫婦で暮らした京都の街で、ゆったりと過ごしてほしいものです。

あまんきみこの家族は子供が2人

あまんさんは結婚後、女の子と男の子を1人ずつもうけました。

お店で布を見るのが大好きだったため、赤や黄、模様入りの布などを買い、子供たちのために服を縫ったそうです。

カタカタと音を立てながらミシンを動かしていると、娘さんは非常に喜んでいました。

ただ息子さんは刺繍が入ったかわいすぎる服は嫌がっていたといいます。

好きな漫画がプリントされたTシャツ、スポーツシャツなどの既製服が欲しかったのです。

息子さんも成長してから親の苦労を知り、母から服を手作りしてもらえたことのありがたみを感じてくれたのではないでしょうか。

あまんきみこの夢を追い続ける生涯

あまんさんは子供たちに架空の話を作ってあげることが好きでした。

「天井にネズミさんがいるわよ」

「雷さんにお電話して音を小さくしてもらうわね」

物語とは呼べないものの、想像力を膨らませて「物語の萌芽」のようなものを作っていたのです。


物語を意識し始めたきっかけは、28歳のときでした。

日本女子大学家政学部児童学科の講義を通信教育で受講し、子供向けの物語をレポートに書いたのです。

これがきっかけで児童文学者の与田凖一さんに、本格的に童話の書き方を習い始めました。

初めての単行本『車のいろは空のいろ』は日本児童文学者協会新人賞と野間児童文芸推奨作品賞をダブル受賞。

40歳になる前に児童文学作家としてデビューを果たしたのです。

戦争をテーマにした名作『ちいちゃんのかげおくり』は小学校3年生の国語の教科書に掲載され、世代を超えて読み継がれています。

2020年には、旧満州が舞台の絵本『あるひあるとき』を発表。

故郷である旧満州について描くことは、もともと目標にしていたそうです。

日本女子大学の通信講座を受講していた学生時代、子育てをしながら国会図書館に通い、熱心に勉強していました。


そこで満州事変が日本軍の工作で起き、日本が中国の民間人を苦しめていたことを初めて知ったのです。

きっと日本人として贖罪の気持ちを込めて満州の物語を描くことで、罪の意識と向き合ったのかもしれません。

忙しい日々を送りながらも通信教育で学び直し、義務感を持って絵本を発表し続けるその姿勢はまさに夢追い人。

あまんさんは目標に向かって努力を続け、正しいと思う行動を起こし続ける理想主義者であるに違いありません。

あまんきみこの作品の特徴、幻想と現実のはざまの見事な描写

あまんさんは幼少期、両親と祖父母、2人のおばがいる7人家族の中で育ちました。

大人たちは偉人伝や民話、世界の童話などを教えてくれたそうです。

さまざまな物語を聞いて育った結果、ストーリーテラーに必要な素養が培われていったのでしょう。

やがて幻想と現実のはざまを描く手腕に長けた作家となりました。

筆者の好きな『きつねのかみさま』は幻想と現実のはざまを揺れ動くような、不思議な物語です。

2人の子供たちの、不思議なきつねたちとの出会い。

それが夢だったのか、現実の出来事だったのかがわからない、少しモヤモヤした感覚に陥る作品です。

また『ちいちゃんのかげおくり』のクライマックスは、彼岸と此岸の境目が消え失せているように思えるかもしれません。

物事を白黒思考で決めつけず、あらゆる選択肢をもたらしてくれる不思議な絵本。

現実世界で疲弊してしまった大人たちこそ、あまん作品に触れて、柔軟な思考と豊かな感性を養いたいものですね。


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