表紙を見ただけでジャケ買いしたくなるようなユーモラスな画風で幅広い年齢層に愛されたイラストレーター・安西水丸(あんざいみずまる)さん。
どこか素人風なタッチで描かれた個性的なイラストは誰もが目にしたことがあると思います。
2014年の突然の死去から早くも5年。
ここでは安西水丸さんの結婚や家族、ファッション、また名コンビだった村上春樹さんについてお送りします。
安西水丸のプロフィール
本名:渡辺昇(わたなべ のぼる)
生年月日:1942年7月22日
生年月日:2014年3月19日
出身地:東京都港区赤坂
最終学歴:日本大学 藝術学部 美術学科造形コース
所属事務所:安西水丸事務所
安西水丸の結婚と家族について
安西水丸さんの生家は祖父の代から建築設計事務所を経営していました。
7人兄弟の末っ子で、5人の姉がいるそうです。
幼少期に喘息を患ったため、一家は母の故郷・千葉県南房総市千倉町へ移り住みました。
千倉での日々のことは小説やエッセイにも綴られており、千倉の海は自分にとっては原風景と語っています。
やがて安西水丸さんは満寿美さんという女性と結婚し、一人娘のカオリさんが誕生。
2017年には父のイラストにカオリさんが文章をつけた初の父子共作の絵本が出版されました。
『RADIOSWITCH』11月2日㈯23時からの放送は、「イラストレーター安西水丸の世界」と題して、#安西水丸 に学び、現在、イラストレーターとして活躍する #信濃八太郎、#山﨑杉夫 そして、安西水丸のひとり娘、#安西カオリ に話を聞く。言葉を通してその世界を旅する1時間。#radioswitch813 #jwave pic.twitter.com/9bkzDNgBKY
— J-WAVE 『RADIO SWITCH』 (@RADIOSWITCH_813) 2019年10月29日
生前、上手な絵ではなく自分にしか描けない絵を描くことが大事と言っていた安西水丸さん。
カオリさんも自分にしか書けないものを書いていきたいと考えて、雑誌などにエッセーを寄稿しているそうです。
子供の頃はお父さんと結婚したいと思っていた少女でしたが、すでに結婚もしています。
結婚した妻の職業は画家
安西水丸さんの訃報では「満寿美」と表記されていましたが、奥さんの職業は画家であり、仕事での名義は「岸田ますみ」です。
画家の岸田ますみさんの展覧会「水平線から」に出かけた。岸田さんは2014年に他界されたイラストレーター安西水丸さんの夫人だ。
さまざまな作品を発表しており、個展を開くこともあるので、絵画好きの人は見たことがあるかもしれませんね。
日曜日は18時まで🎪
本日のサーカス物語は岸田ますみさんの作品「LA STRADA Ⅰ」、このタイトルで思い出すのが、フェリーニの「道」大道芸人ザンパノがラストシーンで歩く海辺の町のように切ない。
〜8月29日(日)までhttps://t.co/OYTjy4dOXd©️岸田ますみ#librairie6 #シス書店 #岸田ますみ pic.twitter.com/p9e5dWo6wp
— Galerie LIBRAIRIE6 (@LIBRAIRIE6) August 22, 2021
2人の馴れ初めは、やはり絵だったようです。
ニューヨークの美術学校へ通うために渡米していた岸田さんは、そこで安西さんと出会ったのだとか。
1969年に電通を退社した安西さんは、ニューヨークのデザインスタジオで約2年間働いていました。
おそらく、その頃に出会ったことがきっかけで、交際を始めたものと思われます。
異国の地で出会った日本人が自分と同じ芸術に関わっていたとなると、お互いに嬉しかったことでしょう。
そんな気持ちも、交際に影響したのかもしれません。
家族に対して厳しく接することも
娘のカオリさんは、インタビューで生前の父親について語ったことがあります。
基本的には優しい父親だったものの、ときには厳しい態度を見せることがあったようです。
「僕の娘ということはスタートから恵まれているのだから」
確かに、父親が知名度の高いイラストレーターというのは、ありふれた家庭環境ではありませんね。
そして、カオリさんの職業であるエッセイストや絵本作家は、父親の仕事に近いフィールド。
両親が芸術と関係ない仕事をしている人より、何かと有利になりそうなイメージです。
ですが、父親としては、親の七光り状態になってほしくなかったのでしょう。
こうした厳しさは妻の満寿美さんにも向けられていたようで、会話の中で辛辣な言葉をぶつけることもあったのだとか。
ただ、ひたすらに刺々しいだけではなく、素直に相手を褒めることもあったそうです。
そんなときは、しっかり本質をついた褒め方をしたという安西さん。
適当なふわっとした言葉を使わず、本当にいいところをズバリと言ってくれたのかもしれません。
だとすると、褒められた満寿美さんやカオリさんは、とても嬉しかったのではないでしょうか。
優しさと厳しさを兼ね備えた父親というのは、とても素敵ですね。
安西水丸は脳出血で死去
安西水丸さんは仕事で多忙な日々が続いており、その日の朝も元気だったといいます。
2014年3月17日に神奈川県鎌倉市にあるアトリエで執筆中に倒れ、救急搬送。
19日に脳出血のため71歳で死去しました。
倒れる直前まで机に向かって仕事をしていたことになりますね。
青山葬儀所で営まれたお別れの会には、家族ぐるみのつきあいだった作家の嵐山光三郎さん、エッセイストの平松洋子さん、俳優の堺雅人さんほか、出版関係者やファン700人以上が参列。
平凡社時代の同僚でもあった嵐山光三郎さんはこれ以降、旅行で目に入ってくる風景が水丸さんのイラストやスケッチとダブって見えてしまうと故人を偲んでいます。
安西水丸の大人の男ファッション
ネット上では安西水丸さんのファッションも好評ですね。
イラストレーター大橋歩が発行していた「アルネ」。安西水丸の私服を大々的にフィーチャーした2003年3号には物凄く影響を受けた。ファッションではなく服に対する考え方や何を選びどう着るのかという態度において。ギャルソンからワーク系までと幅広いがすべてが「安西水丸らしさ」になっている。 pic.twitter.com/o2rURpWIqS
— saku03_(さくらい伸) (@saku03_) February 5, 2021
一見いつも同じ服を着ているようで、よく見るとデザインやディティールは旬のもの。
おそらく自分の定番アイテムがあり、その時々に買い足してきたのでしょう。
ファッションへのこだわりが強く、自身が選びぬいたものだけを着用していたようです。
熱心な安西水丸ウォッチャーによると、アウターはLeeのデニムジャケットを制服のように愛用していたそう。
ボトムスはチノパン、靴はオックスフォードが基本。
ブーツではなく短靴を好む理由は、脱ぎ履きにもたつきたくないから。
靴と傘は良質のものをというポリシーがあったそうです。
改まった席にはコムデギャルソンのジャケットにシャツ、その下はヘンリーネックシャツ。
メーカーはヘルスニットがお気に入りだったそう。
安西水丸さんも愛用していたという「Healthknit」のヘンリーネックTシャツ。その中でも定番は906sというモデル。サイズ感がおもったよりも小さいので、ふだんよりも2つくらい大きいサイズで、ゆったり着るのが今っぽい。#日常の制服 https://t.co/LfgAk2TjVt pic.twitter.com/j6VWc0MJeh
— 松尾 翼 Matsuo Tsubasa (@m2aow) 2017年5月26日
極めつけは懐中時計。
それもアンティークの本格的な手巻懐中時計でした。
実用性というよりも、ファッション性に魅かれて愛用していたのではないかと思います。
安西水丸の盟友だった村上春樹
死去の報道でも、決まって「村上春樹さんの~」という枕がつくほど名コンビだった二人。
もし安西水丸さんがイラストを担当していなかったら、村上作品は少し違った印象になっていたかもしれないというのは言いすぎでしょうか。
村上春樹・安西水丸
「村上朝日堂の逆襲」#読了毎回書くけど、水丸さんの絵たまらん🤣絵が上手い人がふざけて描くからかなぁ〜味があるっていうか、ブサかわいいの原点。あ、もちろん文章も最高に面白いです。村上春樹のエッセイは安定。こちらも文章上手い人がふざけて書くからかな〜とても魅力的。 pic.twitter.com/7j5Cryrtt5
— ハイネ君 (@hainekun1Q84) June 29, 2022
かつて村上さんがジャズ喫茶を経営していた頃、偶然にも近所に安西さんが住んでおり、当時から二人は親交がありました。
もともと村上さんは安西さんのイラストが大のお気に入りだったそうです。
村上作品にたびたび登場する「渡辺昇」「ワタナベノボル」は安西さんの本名。
『村上朝日堂』ほか、対談を収録したCD-ROM『夢のサーフシティー』など共作もたくさんあります。
二人は本当に気の合う間柄だったようで、村上さんは、誰であろうと彼の代役を務めることはできないという言葉を残しています。
小さい頃から絵を描くことが大好きだったという安西さん。
多くのハルキストたちも、村上さんにとってかけがえのない存在だったと感じているのではないでしょうか。
安西水丸の経歴まとめ
本や雑誌のイラスト、漫画・絵本・小説の執筆など70年代から活躍してきた安西水丸さん。
本名を渡辺昇さんといい、1942年7月22日に東京都港区赤坂で生まれました。
日本大学藝術学部美術学科を卒業後、広告代理店や出版社勤務などを経てフリーのイラストレーターに。
一般的には村上春樹さんの書籍の装丁のイラストレーター、および共作者のイメージが強いでしょう。
安西水丸さんのイラストはひと言でいうととてもシンプル。
必要な線と色だけで描かれており、どこか脱力系で、ユーモアや哀愁がじわじわと見る人の心に迫ります。
手を抜いていいかげんに描いたように見えるイラストですが、実はこの「手抜きに見える」というところに周到な計算があるのかもしれません。
一度見たら心に残る作風であることは確かですね。
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