女性学・ジェンダー研究のパイオニア、または人生相談の名手、あるいは日本一ケンカが強い学者など、さまざまな尊称を持つ上野千鶴子(うえのちづこ)さん。
夫を持たず独身であり続ける背景には、長きにわたり牽引してきたフェミニズムの思想がありました。
結婚や子供の出産についての考え方をまとめます。
夫と子供を持たない上野千鶴子
東京大学退官後もWAN(Women’s Action Network)理事長として精力的な活動を続けている上野千鶴子さん。
2019年の東大入学式では祝辞が大きな反響を呼び、名前がツイッターでトレンド入りを果たしました。
祝辞の中で上野さんは、大学組織にもいまだ性差別が残っていることを具体例を挙げて指摘し、がんばれば報われると思えるのは恵まれた環境の賜物であることや、自らの能力を自分のためだけでなく不平等が残る社会においても使ってほしいことなどを述べました。
この祝辞に対しては、ニューズウィーク日本版のコラムが「名演説」と評価する一方で、批判的な見解を示す元東大総長も。
ネット上においても賛否が分かれる形になりました。
半世紀近くにわたり男性中心社会に疑問を投げかけてきた上野千鶴子さん。
2023年は76歳を迎えますが、結婚歴はなく、子供もいません。
男嫌いと誤解されることもありますが、ご本人はけっして男嫌いではなく、男性は愛すべき生きものと思っており、恋愛や男性と暮らすことに躊躇はないとのこと。
恋愛にはエゴイズムのぶつかり合いのようなところがあり、若い頃は殺し合いすれすれの激しい恋もしてきたそうです。
それでも結婚に魅力を感じたことは一度もないと言いきる上野千鶴子さん。
自分と相手との間に契約・所有・権利といった関係が生じるのがどうしても理解できないと語ります。
上野さんが考える結婚の定義とは、「自分の身体の性的な使用権を、生涯にわたって特定の異性に排他的に譲渡する契約」。
これはつまり、性的な身体の自由を放棄してヘンテコな契約を結び、もしパートナーが契約を破ったら責める権利が与えられるということ。
つぎはこの定義について詳しくみていきたいと思います。
上野千鶴子が結婚せず独身でいる理由
恋をする相手は一人、性的な関係をもつ相手は一人という結婚生活の常識に異を唱える上野千鶴子さん。
ある時、「最後の恋が始まる」という結婚式場のコピーを見て、「ウソでしょ?」と思ったそうです。
確かに人の気持ちは移ろうもので、たとえ既婚者でも夫や妻以外の異性と恋におちることはあるでしょう。
そうなると「じゃあ結婚は何だったの?」という疑問が頭をもたげます。
守れない約束、守れない誓いはしないほうがいいというのが上野さんの考えです。
長らくフェミニズムに取り組んできたのは、男女平等以上に自由を制約されたくないという理由がありました。
ことに性的な自由は重要ととらえているようです。
そんな上野さんに対して、「じつは結婚することになりました」と申し訳なさそうな顔をして報告する教え子もいるのだとか。
■今人気の記事■ 【結婚とは「一瞬が永遠に続く」という妄想だ】 上野千鶴子さんが語る「結婚と家族」 : https://t.co/LS5FAxqSeb #東洋経済オンライン pic.twitter.com/X2IJVLzdwb
— 東洋経済オンライン (@Toyokeizai) September 9, 2016
上野さんは結婚してはいけないと言っているのではなく、かけがえのない相手に出会えるのは幸福なことと述べています。
ただし、そのような相手と濃密な関係を築くのは婚姻届を出さない形でも可能というわけですね。
上野千鶴子はフェミニズムの旗手
上野千鶴子さんは東京大学入学式の祝辞でフェミニズムについて端的に説明しています。
いわく、フェミニズムとは女性が男性のようにふるまいたいとか、弱者が強者になりたいという願望ではなく、弱者が弱者のままで尊重されることを求める思想。
2020年1月刊行の『上野先生、フェミニズムについてゼロから教えてください!』は漫画家の田房永子さんが上野さんにフェミニズムを一から教えてもらう対談集です。
長い間フェミニズムや女性学研究を牽引してきた上野さんですが、70年代から始まったフェミニズムバッシングもあって、後ろを向いたら誰もついてきてなかった時期もありました。
本が売れなくなるから「フェミニズム」や「ジェンダー」という言葉をタイトルに使わないでほしいと編集者に言われたこともあったそう。
だからこの本のタイトルがとてもうれしく、偏見や差別を我慢せずに訴える若い女性が増えてきたことも心強いと語ります。
フェミニズムが生んだ女性学と出会ったのは20代後半の頃でした。
女性である自分自身を研究対象にできることが新鮮だったそうです。
たとえば、生理用品の歴史を調べるにも文献や資料はなし。
先行研究が皆無だったおかげで、あらゆる研究テーマでパイオニアになれたと笑う上野千鶴子さん。
女性の社会進出が進みつつある今もなお、私たちの何気ない言動には「女性はこうあるべき」という不文律が潜んでいると語っています。
風をきって先頭を走る爽快なイメージそのままに、これからもトップランナーであり続けてほしいと思います。
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