夏目漱石、死因はピーナッツ?最後の作品は未完。病気に苦しんだ短い生涯

わずか10年あまりの作家活動で、日本の近代文学に大きな足跡を残した夏目漱石(なつめそうせき)。

少し前まで発行されていた千円札でもおなじみですね。

精悍なまなざしや口髭からは壮健な印象も受けますが、実のところは非常にストレスに弱く、病気に悩まされた生涯でした。

今回は死因とピーナッツの因果関係や、未完で絶筆した最後の作品についてみていきます。

夏目漱石のプロフィール

本名:夏目金之助

生年月日:1867年2月9日(慶応3年1月5日)

死没:1916年12月9日

身長:推定159cm

出身地:牛込馬場下横町(現在の東京都新宿区喜久井町)

最終学歴:帝国大学英文科(現在の東京大学)

夏目漱石の死因はピーナッツの食べ過ぎ?

『吾輩は猫である』『坊っちゃん』『それから』など数多くの傑作を著した明治の文豪、夏目漱石。

しかし漱石が実際に小説家として活動した期間は、デビュー作の『吾輩は猫である』からわずか10年あまりでした。


年齢でいうと、38歳から49歳で亡くなるまでにあたります。

夏目漱石が永眠したのは1916年(大正5年)12月9日のことで、死因は胃潰瘍でした。

胃の状態の悪さに加え、糖尿病にも悩まされていたそうです。

そのような体調で、11月21日にはフランス文学者・辰野隆の結婚式に出席。

そこで供されたピーナッツを食したところ、帰宅後に胃の状態が悪化。

体内出血を起こして帰らぬ人となりました。

夏目漱石はストレスにとても弱く、神経過敏なところがあったといわれており、ストレスを忘れるためか、過食の傾向もあったそう。
持病の胃潰瘍や糖尿病によくない食べものは医師に禁じられており、鏡子夫人も目を光らせていたのですが、大好物のジャムやアイスクリーム、ピーナッツ、さらにはこってりした中国料理や西洋料理をよく口にしていたとのこと。

消化の悪いピーナッツを食べたことが胃に負担をかけてしまい、腹腔内の大量内出血を引き起こしたとされています。

息子である夏目伸六の『父・漱石とその周辺』によると、漱石の大好物はピーナッツを砂糖で固めたお菓子とのことで、書斎でポリポリ楽しんでいることもあったそう。

残念ながら、結婚式でピーナッツを食べてしまったことが死期を早めたといえそうです。

ちなみに、『父・漱石とその周辺』によると最期の言葉は「何か食ひたい」だったそう。

最期の言葉についてはさまざまな話があるようですね。

未完となった最後の作品

執筆中だった『明暗』は、漱石の死去により未完のまま終わります。

同作品は1916年(大正5年)5月26日から12月14日まで『朝日新聞』に連載された小説。

作者夭逝のため188回で絶筆となっています。

内容は、どこかぎくしゃくした夫婦関係を軸に描いた人間のエゴイズム。

未完成とはいえ、やはり読者の絶賛の声が多いですね。

『明暗』は漱石の小説の中でもページ数が多いですが、それでもこの作品を読んでいるあいだに飽きる読者はほとんどいないのではないでしょうか。

たとえ未完の小説であっても、作中に仕掛けられた伏線の妙や個性的な登場人物たちを堪能することは十分にできます。

『明暗』といえば、避けて通れないのが水村美苗の『続明暗』ですね。

オリジナルの文体に似せながら、未完成の『明暗』の続きを書く試みは、当時たいへんな話題を呼びました。

夏目漱石は病気のデパートだった

夏目漱石の生涯は病気のオンパレードで、ことに晩年は健康で過ごした時期のほうがめずらしいほどでした。

幼少期の疱瘡(ほうそう)にはじまり、虫垂炎、腹膜炎、トラホーム、肺結核、神経衰弱、糖尿病、胃潰瘍。


命を奪われた胃潰瘍だけでも5回は再発しています。

自身の病気を直接つづった随筆もありますが、『吾輩は猫である』や『明暗』の登場人物が胃弱だったり、痔の診察を受けたりと、小説にも病気を投影させていますね。

まさに多病の文豪といえる漱石ですが、なかでも特筆すべきは、やはり「修善寺の大患」でしょう。

1910年(明治43年)、『門』執筆中に胃潰瘍で倒れた漱石は、療養のため伊豆の修善時を訪れます。

しかしそこで800ccもの血を吐いて危篤状態に。

一時的とはいえ、死の淵に立ったことは以降の創作に大きな影響を与えることになりました。

一方で、現代のメンタルヘルスや精神医学に照らして考えると、漱石は精神的な疾患を患っていたのではないかと指摘する医師も。

イギリス留学中に極度の神経症に悩まされたエピソードも有名ですね。

ストレスは万病のもとといいますが、繊細でストレスに弱かったことが病気を呼び込む要因になったのかもしれません。

あまりに短い49歳と10か月の生涯でした。


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