井上荒野は父も著名な作家、母は謎の存在。瀬戸内寂聴との関係&結婚した夫について

両親とその不倫相手を題材にした小説が大きな話題となった井上荒野(いのうえ あれの)さん。

荒野さんでしか書きえない作品であると共に、書くべき作品だったのかもしれません。

井上荒野の父も有名な作家

デビュー作「わたしのヌレエフ」がフェミナ賞を受賞するなど華々しい文芸デビューを飾った井上荒野(いのうえあれの)さん。

「井上荒野」という名前はペンネームと思う人がいるかもしれませんが本名なんです。


定期的に大量の本が送られてくるという環境で育ったため幼少期から読書好き

面白い本を読んだ後はその本の亜流のような作品を書いたりもしていたそうです。

とはいえ井上荒野さんは文学にしか触れてこなかったわけではありません。

小学校5、6年の頃には漫画漬けの日々を過ごし、中学生の頃は漫画家を志したことも。

ですが、ストーリーは浮かぶものの画力が付いてこない事から漫画家は断念。

高校では創作批評を行うクラブに所属し大学では同人誌サークルに。

着実に作家への道を歩んでいた井上荒野さんですが作家になる決断はなかなか出来ず。

そのため大学卒業後は3年ほど、小学館でアルバイトをしていたそうです。

ただ、作家になる夢をあきらめきれなかったのかアルバイトを辞めた後はフリーのライターをしながら同人誌で小説を発表。

そして自分でも納得いく作品をフェミナ賞に応募したところ見事に受賞。

小説家として華々しいデビューを飾りますが、「良いものを書かなくては」というプレッシャーからその後は小説を書くことが出来なくなってしまったそうです。

それから文芸界に復帰したのは10年以上が経過した2001年のこと。

一時、スランプに陥ったものの井上荒野さんの小説家としての才能は本物。

2004年に島清恋愛文学賞を受賞すると、その後も直木賞、中央公論文芸賞、柴田錬三郎賞、織田作之助賞と受賞ラッシュ。

こうして日本の文芸界を代表する作家の1人として知られるようになった井上荒野さん。

ご存じの方も多いかもしれませんが、父の井上光晴さんも著名な作家です。

「戦後文学の旗手」と呼ばれ、戦争や原爆、差別などをテーマに多くの作品を発表した光晴さん。

晩年がドキュメンタリー映画化されるなど時代を代表する作家として知られています。

また、井上光晴さんと言えば瀬戸内寂聴さんと不倫関係にあった事はあまりにも有名。

寂聴さんが出家したのは光晴さんとの関係を断ち切るためなんです。

不倫をする一方で家族思いの一面もあった光晴さん。

特に子供に対しては惜しみない愛情を注いでいました。

荒野さんが幼少期に大量の本が届いたのも、光晴さんが編集者に子供用の本を見繕って贈るように頼んだから。

また、荒野さんが書いた小説は全て褒めてくれたそうで、内容がいまいちだった時にはタイトルを褒めてくれたんだとか。

光晴さんには「荒野さんを作家にしたい」という思いがあったのかも。

その思惑通り作家となり、地位も名声も獲得した井上荒野さん。

きっと光晴さんは荒野さんが持つ作家としての才能に気づいていたのでしょうね。

井上荒野にとって母は謎の存在だった

父、井上光晴さんが瀬戸内寂聴さんと不倫している事に気づかなかったという井上荒野さん。

それには母が大いに関係していると言います。

荒野さんが5歳〜12歳の7年間、不倫関係にあった井上光晴さんと瀬戸内寂聴さん。

まだ幼い荒野さんが気が付かなかったのも無理はありません。

ただ、母は間違いないく気が付いていたはず。

ですが井上光晴さんを咎める事も愚痴をこぼす事もなかったんだとか。

そんな母はを井上荒野さん曰く「謎の存在」。

また、光晴さんには瀬戸内寂聴さんの他にも多くの女性の影が。

それでも別れを告げる事なく添い遂げた井上荒野さんの母。

更には「光晴さんと同じ墓に入れて欲しい」と頼んで亡くなったそうです。

ここまで来ると井上光晴さんに対する執念すら感じさせますよね。

そんな井上荒野さんの母ですが、過去に小説を書いていた事があるんだとか。

光晴さんの作品として出版されたものの中にも母が執筆したものがあると考えているそうです。

「これは母の作品では」と感じられるのは長年、生活を共にしてきたから分かること。

ただ、本当に母の作品かどうかは母が亡くなった今では分からず終い。

以前、荒野さんは「小説家の資質は、母から受け継いでいる感じがする」と語っています。

その才能を表に出すことが無かったところも井上荒野さんに取っては謎に感じられるのかもしれません。

井上荒野と瀬戸内寂聴は良好な関係?


女流文学賞や谷崎潤一郎賞、芸術選奨など多くの賞を受賞し、小説家として高い評価を受ける瀬戸内寂聴さん。

井上荒野さんにとっては女流作家の先輩であり、父の不倫相手という微妙な関係。

そのため荒野さんと寂聴さんの関係性が気になる人も多いのではないでしょうか。

家庭が壊されなかったとはいえ、父と不倫していたのは事実。

荒野さんが寂聴さんを恨んでいても不思議ではありませんよね。

ところが2人の関係は良好そのもの。

そもそも寂聴さんは荒野さんが文芸界にデビューするきっかけとなったフェミナ賞の選考委員でした。

もし恨んでいれば寂聴さんが選考委員を務める賞に応募なんてしていないはず。

その後もパーティーで会ったり、対談したりと関係が続いた二人。

以前、井上荒野さんの父が瀬戸内寂聴さんに贈ったネックレスをもらった事を明かしています。

更に現在、井上荒野さんが使っている机も寂聴さんから貰ったものなんだそうです。

父と母、瀬戸内寂聴さんをモデルに小説「あちらにいる鬼」を執筆する際には、寂聴さんは多くの話をしてくれたんだとか。

もしかすると寂聴さんは心のどこかで荒野さんの事を娘のように思っているのではないでしょうか。

井上荒野さんの元から父を引き離してしまった事に対する懺悔のような気持ちもあるのかもしれませんね。

井上荒野が結婚した夫とは

井上荒野さんの夫は古書店「古群洞」を営む須賀典夫さん。

作家と古書店主という二人を結び付けたのはインターネットでした。

インターネットで出会ったと聞くといわゆる「出会い系」を想像する人も多いかもしれません。

ですが荒野さんと須賀典夫さんが知り合ったのは出会い系ではありません。

欲しい本をインターネットで探していた荒野さん。

目的の本を見つけたのが須賀典夫さんが経営する古群洞でした。

一方の須賀典夫さんは偶然にもその辺りの時期に井上光晴さんの追悼文集を手に取る機会があったそうです。

そして届いた注文のメールに書かれた名前が光晴さんの娘の名前と同じだった事から「お嬢さんですか」とメールで尋ねたんだとか。

こうしてメールでやり取りを行うようになったという二人。

須賀典夫さんがホームページに掲載していた俳句や映画評などで盛り上がり意気投合。

メールでのやり取りだけでなく実際に会うようになった事で友人から恋人関係に発展し同棲を開始。

それでも当初は結婚を意識していなかったという荒野さんですが「籍を入れたほうが面倒がなさそう」という理由から入籍したそうです。

ちょうどこの頃の荒野さんはプレッシャーから小説を書くことが出来なかった時期。

ですが、須賀典夫さんと結婚し自分の居場所が出来たという安心感から徐々に小説を書くことが出来るようになったんだとか。


父の井上光晴さんが良き妻に恵まれたように、井上荒野さんも良き夫に恵まれたようです。

公私に渡って人生の転機には常に本があった井上荒野さん。

生まれ育った環境も含めて作家となるのは天命だったのでしょうね。

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