「汚れっちまった悲しみに」や「サーカス」など、哀愁を帯びた見事な表現で知られる詩人・中原中也(なかはら ちゅうや)。
早世が惜しまれる彼ですが、子孫はいるのでしょうか。
妻、息子の詳細も見ていきながら、同時代の詩人である宮沢賢治と萩原朔太郎との関係についても探っていきましょう。
中原中也のプロフィール
本名:中原中也(旧姓：柏原)
生年月日:1907年4月29日
死没:1937年10月22日
身長:150cm前後
出身地:山口県および広島県
最終学歴:東京外国語学校専修科仏語部(現在の東京外国語大学)
中原中也の子孫はいる？
まずは中原中也の子孫がいるかどうか見てみましょう。
中也の長男である文也は2歳で病死しており、次男の愛雅(よしまさ)も、中也が死んだ翌年にわずか1歳で亡くなりました。
早死にの血筋だったのか、中也の直接の子孫で成人できた人はいないようです。
中原中也の妻と息子の死
次に妻と息子について、詳しく見ていきましょう。
妻は上野孝子という、中原家の親戚筋の女性で、中也より6歳年下でした。
孝子の弟である思郎によると、中也の方は2cm背が低く、写真を撮る際に身長差を隠すのに苦労しています。
26歳で結婚した中也は、その後充実した結婚生活を送りました。
わがままな性格にもかかわらず、孝子の言うことに対しては素直に従っていたので、それだけ好みの女性だったのかもしれません。
長男・文也が生まれると溺愛しますが、文也はわずか2歳で、1936年に小児結核により亡くなりました。
3日間寝ずに息子の看病をし、亡くなると遺体を抱いて棺に入れたがらなかったそうですから、悲しみに暮れていたことがわかります。
12月に愛雅が生まれても、心の傷が癒えることはなく、中也自身も体調を崩して翌年に死去。
孝子はその後、夫の父方の親戚である軍人と再婚。
再婚後は、「作家にはもう寄り付かない」と語っていたそうです。
中也と文学仲間の勝手な振る舞いに、気苦労が絶えなかったのでしょう。
宮沢賢治&萩原朔太郎との関係
次に中也と同じく日本文学界を代表する詩人である、宮沢賢治と萩原朔太郎とは、関係があったのかを見ていきましょう。
まず賢治についてですが、中也は賢治の詩集『春と修羅』を愛読していました。
賢治の死後、「宮沢賢治全集」が刊行された際、「宮沢賢治全集刊行に際して」と題した文章中で十年来の愛読者だったことを公表しています。
今でこそ偉大な詩人と言えば「宮沢賢治」という名前が真っ先に浮かぶでしょうが、実は本人が生前に刊行された詩集は『春と修羅』のみでした。
そのことについて中也は、不思議に思うと述べ、その早世を惜しみました。
2人の作風はまったく異なっているようでいて、実は相通じるものがあるようにも思えます。
中也は賢治の牧歌的な詩と独特な言葉の響きに出合ったことで、詩作に相当な影響を受けました。
例えば、中也は何げない光景や自然の営みを巧みに切り取っていますが、自然描写の巧みな賢治の詩がその土台になっている可能性は高いでしょう。
作風こそ一見大きく異なっているにせよ、直接の接点を持たずに、中也が一読者として賢治を敬愛していたことは間違いありませんね。
続いて、萩原朔太郎と中也について見ていきます。
朔太郎は『月に吠える』などが代表作の詩人で、マンドリンの演奏が得意だったことでも知られています。
難解な文語表現ではなく、話し言葉で自由に語る口語自由詩という分野を確立した人物であり、文芸評論やエッセイも残しました。
1886年の生まれで、中也より21歳も年上のため、朔太郎から中也は「くん」を付けて呼ばれる位置にいます。
2人は3回ほど直接交流をしていたという記録があるのですが、朔太郎によると「きわめて浅い知り合い」だったそうです。
『無からの抗争』という朔太郎の著書に、中也が短い推薦文を書いたこともあります。
そこでは、「氏の著作が売れることは私にとっても喜び」と述べているため、先輩の人柄を慕っていたことがうかがえますね。
2人とも裕福な医者の家庭に生まれながら、就職もせずに芸術活動へ没頭してしまうという共通点を持っており、お互いに同じ境遇にあるという心強さがあったかもしれません。
中也が長生きしていれば、朔太郎ともっと交流を深め、影響を受けながら名作を発表していった可能性が高いでしょう。
今回は中原中也とその周辺人物についてご紹介しました。
稀有な才能の持ち主の早世を、周囲の人々は現代のファン以上に惜しんでいたことでしょう。
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