現代文学を代表する作家である津島佑子(つしま ゆうこ)さん。
太宰治の娘として知られていますが、幼くして父を亡くしており、その作品には孤独の影が付きまとっている印象があります。
そんな津島さんの夫、娘、息子の情報から、家系の詳細を確認し、その文才が引き継がれているのか見ていきましょう。
津島佑子のプロフィール
本名:津島里子
生年月日:1947年3月30日
死没:2016年2月18日
身長:不明
出身地:東京都三鷹市
最終学歴:白百合女子大学英文科卒業、明治大学大学院英文科中退
津島佑子の夫とスピード婚と離婚
まずは津島さんの夫について見ていきましょう。
結婚したのは1970年であることがわかっています。
中学から大学までを白百合女子に通い、英文学を学んでいた大学時代に『よせあつめ』という同人誌を発行するなど、太宰の娘にふさわしい文学少女だった津島さん。
大学卒業後は明治大学大学院で引き続き英文学を専攻しますが、ほぼ講義には出ず中退。
一時期は財団法人放送番組センターに勤めていたようですが、結婚ですぐに退社しました。
1971年に最初の作品集『謝肉祭』を刊行し作家デビュー、翌年には娘を生んでいます。
夫は劇団の台本作者で、津島さんの小説を舞台化したいと希望したことを機に交際。
出会いから3週間ほどであっさり結婚したそうです。
しかし後年不仲になり離婚し、そのときの様子は代表作『光の領分』に記されています。
自らの不幸と向き合ったこの作品は、野間文芸新人賞を受賞しました。
また母子家庭が多くの作品のモチーフにもなっていることからわかるように、女手一つで娘を育てたことがうかがえますね。
短編「射的」(津島佑子)を読む。二人の子供を育てる母子家庭の女性が海へ行き、小さな射的場で子供と射的をする、それだけの話なのだが、母親の現実否定の想像力が、海を、自分を、射的場の青年を、そして一連の行楽を神話にしてしまう。龍や翼が出てきても、怖ろしいほど切実なリアリティーがある。
— マツ(許してください) (@matsurara) October 8, 2017
さらに1歳で父の太宰を亡くし、母・美知子と、姉・園子の女性だけの家庭で育ったことも、作品のテーマに影響しているのでしょう。
その後パートナーとなる男性が現れるのですが、結局は籍を入れずに別れていることからも、別れの多い人生だったことがうかがえますね。
孤独の影に付きまとわれ、それを振り払いきれない性格になってしまっていたのかもしれません。
津島佑子の娘と息子
次に津島さんの子供について見ていきます。
津島さんには正式な夫だった男性との間に娘、一時期パートナーだった男性との間に息子がいました。
娘の名前は香以(かい)で、彼女は後に石原燃(いしはら ねん)の名前で劇作家となりました。
2020年には小説『赤い砂を蹴る』で文壇デビューし、芥川賞の候補にもなっています。
石原燃「赤い砂を蹴る」#読了。
芥川賞候補の3つ目。ブラジルを旅行する女主人公と知人の芽衣子さん。かつて主人公は母と弟を亡くしていて心にわだかまりを抱えている。芽衣子さんも同じような境遇で…。
なかなか渋めの作品。変に主人公が癒されて終わりとかじゃない所がいい!死者を思う気持ちを!🇧🇷 pic.twitter.com/E3pGK9I0F7— つかっちゃん読書垢@純文学ユーチューバー (@book_tsukatsu) July 5, 2020
次に津島さんとパートナーの男性がもうけた息子についてですが、1976年に生まれ、9歳のときに呼吸発作で亡くなったことがわかりました。
津島さんが88年に発表した『真昼へ』という作品には、我が子を失う悲しみがつづられており、以降もこのときの悲劇が津島作品に影を落とすことになります。
そんな母の影響を受けたのが、娘の燃さん。
『赤い砂を蹴る』には女性画家が登場しますが、彼女の息子は風呂場で心臓発作により急死したという設定のため、津島さんの幼い息子の死がモチーフになっていることがうかがえます。
燃さんにとって母は絶対的存在だった可能性は高く、その腹違いの弟のことすら作品に落とし込むほど、強烈な影響を受けたことがわかりますね。
津島佑子の家系まとめ。文才は引き継がれていた
文豪・太宰治の娘である津島さん。
その記憶はないにせよ、文才が太宰の孫にあたる燃さんにまで脈々と引き継がれていたことがわかりました。
津島さんの作品はヨーロッパのみならず、アラビア語圏でも翻訳されるなど、時代と地域を超えて愛されています。
しかし父娘そろって、芥川賞を受賞しておらず、燃さんがこの家系初の芥川賞作家になるのではと世間が期待するのは当然。
しかしそこばかりにとらわれず、石原燃という作家が、祖父や母とは異なる境地を見出していくのではと考える方が楽しみも増すのではないでしょうか。
そうすればご自身もプレッシャーを感じず、七光りではない独自の面白い作品創作に注力できるでしょう。
太宰の娘であることを忘れさせるほど独自の世界を築いた津島さん。
次はその世界を燃さんがどう塗り替えていくのか、注目すべきでしょう。
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