日本映画界に君臨する巨匠・黒澤明(くろさわ あきら)。
作品を観たことはなくても、『七人の侍』や『用心棒』などのタイトルを一度は耳にしたことがあるでしょう。
今回は黒澤がなぜ高く評価されてきたのか、凄さを分析します。
また巨匠らしさがうかがえるエピソード、作品に対する海外の反応、独特の音楽手法をご紹介します。
黒澤明のプロフィール
本名:黒澤明
生年月日:1910年3月23日
死没:1998年9月6日
身長:182cm
出身地:東京都
最終学歴:京華中学校(現在の京華中学高等学校)
黒澤明の凄さ
まず黒澤の凄さを分析します。
2018年、黒沢の凄さが一発でわかる約8分の動画が話題になりました。
日本語字幕も付くので安心ですね。
これはサンフランシスコの映画製作者トニーシュウさんが、クロサワ映画について解説したものです。
「映画界のベートーヴェン」と絶賛し、作品を観たことがない人にもわかりやすく、その魅力を紹介。
『アベンジャーズ』を比較対象に出し、いかに黒澤が優れているか伝える解説方法は見事です。
動画を見るだけで、誰もがクロサワ映画を観たいと思わせる仕組みになっていました。
動画の内容を簡単にまとめると、黒澤はカメラワークだけでストーリーを伝える力量があったということです。
カメラの動きに始点、中間、終点があり、人物の動きを始めから終わりまで追いかけます。
例えば代表作『生きる』のワンシーンでは、役人がデスクの前にやって来て、座り、書類の中に沈み込みます。
一連の流れだけで、その人物がやりがいのない仕事に埋没している虚無感が伝わってきますね。
人物に動きがない場合は、背景に雨や雪、風など自然物が動く様子を映し出すことで変化を加えるのです。
また、静かなシーンの後はにぎやかなシーンをつなぐことで、作品が単調にならない工夫もされています。
『椿三十郎』におけるラストの決闘シーンでは、一瞬の静寂ののち、衝撃的な展開が待ち受けているのです。
クロサワ映画は敷居が高いという人も、シュウさんの解説を見れば、思わず興奮するはず。
『アベンジャーズ』の撮影技法をバッサリ批判していますが、アベンジャーズファンの方でも、解説を見れば納得するでしょう。
誰でもクロサワ映画の凄さを理解できるので、解説を視聴してから実際に作品を鑑賞すれば、確実に楽しめるでしょう。
黒澤明のエピソード
次に黒澤の巨匠ぶりがわかるエピソードをご紹介します。
巨匠というだけあり、良い作品作りのためなら妥協は許さない人物でした。
そのためスタッフや役者に無理難題を押しつけることもしばしば。
特にリアルを追求する姿勢は、時に常軌を逸した要求につながりました。
『どん底』では、老人役の二代目中村鴈治郎に対して、歯を全部抜くよう要求したそうです。
しかも鴈治郎は本当に歯をすべて抜きました。
プロの要求に全力で応える名優の気概もすさまじいですね。
仲代達矢さんは『七人の侍』で約2秒しか登場しない通行人役でしたが、監督から歩き方について何度もダメ出しを受け続けました。
卯之助を演じた仲代達矢は『七人の侍』で端役なのにさんざんNGを出されたといういやな記憶があったため、この役をきっぱりと断ったとか。しかし黒澤明から直々に説得されて出演して以降黒澤映画の顔になるのだから、世の中は何がどう転ぶかわかりませんな(*´∀`*)#用心棒
— ほどくま(*´∀`*)✨ (@Aburasumashidon) March 24, 2019
現代であればパワハラで訴えられてしまいそうですね。
徹底的にリアルを追求した黒澤の期待に、周囲の人々が懸命に応えることで、名作が生まれたのでしょう。
クロサワ映画に対する海外の反応
次にクロサワ映画に対する海外の反応をご紹介します。
「世界のクロサワ」と呼ばれるようになったきっかけは、1951年に『羅生門』でヴェネツィア国際映画祭の金獅子賞を受賞したこと。
金獅子賞は最高賞にあたります。
この時初めて、クロサワ映画に限らず、日本映画が国際的に評価されたのです。
さらに2018年、BBCが発表した「外国語映画トップ100」の1位が『七人の侍』でした。
しかし投票した映画専門家の内訳を見ると、日本人は誰もクロサワ映画に投票していなかったそうです。
クロサワ映画に対しては海外の反応の方が、上々ということになりますね。
おそらく日本人は、心のどこかで西欧が優位と意識しているのでしょう。
映画といえばハリウッドかヨーロッパの作品が優れていると、感じてしまいがちなのかもしれません。
あるいは日本人の謙虚で内気な性格を考えると、あえて自国の映画に投票しなかったのでしょう。
いずれにせよ、『七人の侍』は海外の人々からアクション映画の原型として、今でも崇拝されているようです。
海外の人は、日本人が気づいていないクロサワ映画の魅力をわかっているのかもしれませんね。
独特の音楽手法とは
最後に黒澤独自の音楽手法をご紹介します。
黒澤は映画作品の中で、シーンの状況に合わない音楽を流すという、独特な手法を使うことが度々ありました。
例えばシリアスなシーンに、あえて明るい音楽を流します。
そうすることで深刻すぎる印象を避けるだけでなく、明るい音楽がシリアスさを際立たせるという、不思議な効果があるのです。
シーンと音楽の調和をあえて避ける、いわば「音と映像の対位法」という手法。
『醉いどれ天使』では三船敏郎演じるヤクザが闇市を歩くシーンがあります。
ここで深刻な音楽を流せば、暗いだけのヤクザ映画になりかねません。
しかし黒澤は、不敵な面構えの三船が闇市を歩く重苦しいシーンに、軽快な『かっこうワルツ』を流します。
そうすることで、主人公の置かれている状況のむなしさや、彼の孤独が強く伝わってくるのです。
音楽に対するこだわりの激しかった黒澤。
良き相棒であった作曲家の早坂文雄とは、共に見事な作品を作りました。
しかし早坂の死後は、複雑な要求を理解できる作曲家が少なかったようで、トラブルが絶えませんでした。
それでも黒澤のこだわり抜いた音楽手法は、現代の映画監督にも大きな影響を与えたようです。
セルジオレオーネによる『夕陽のガンマン』でも、残酷なシーンで切ないオルゴールの旋律が流れます。
多くの監督がクロサワ映画の影響を受け、彼に追いつき、追い越そうと努力してきたのでしょう。
日本映画のみならず、世界の映画に対して多大な影響を与えた巨匠といえるでしょう。
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