京極夏彦の手袋(手甲)スタイル。平凡な本名、天才の理由。水木しげるを敬愛

綾辻行人さんの著作の装丁を手がけるなど、アートディレクターの顔も持つ直木賞作家の京極夏彦(きょうごくなつひこ)さん。

メディアに登場する際は手袋(手甲)に和装というスタイルがお決まりになっていますが、これは「百鬼夜行シリーズ」の中禅寺秋彦を意識したものなのでしょうか。

また「京極夏彦」というかっこいいペンネームの由来やいたって平凡な本名、天才といわれる理由、敬愛する水木しげるさんについてまとめました。

京極夏彦は革の手袋(手甲)、着物という独特なスタイル

京極夏彦さんのデビュー作にして代表作である「百鬼夜行シリーズ」。

「レンガ本」と呼ばれる本の厚さで有名な人気シリーズですが、個人的にはタイトルに登場する妖怪の名前が難しく、なじみがないのが玉にキズです。


デビュー作『姑獲鳥の夏』(うぶめのなつ)を持ち込んだ講談社の編集者もタイトルが読めなかったそうですから、タイトルひとつをとっても妖怪研究家のカラーが表れているといえますね。

同シリーズは京極堂こと中禅寺秋彦が、妖怪・伝承・民俗学などの知識を駆使して事件の謎解きにあたるところが最大の魅力。

長大なストーリーですが、それを読者に感じさせないスピーディーな展開は著者の筆のなせるわざでしょう。

作中で京極堂が憑き物落とし(つきものおとし)をする際は、胸に五芒星を染め抜いた黒の着流し、黒の手甲(てっこう、てこう)、黒の足袋、そして赤い鼻緒の黒の下駄と、超絶怪しいいでたち。

手甲とは耳慣れない言葉ですが、これは外傷や汚れなどから腕を守るために手の甲までを覆う防具のこと。

手の甲にあたる部分の輪に中指を通して固定させる腕カバーのようなものです。

時代劇の忍者や旅人がよくしている、あれですね。

京極夏彦さんもメディアに登場する際は必ず着物姿に革の手袋。

手袋はオープンフィンガー・タイプで、オーダーメイドなのだそう。

このファッションは中禅寺秋彦と重なりますが、ご本人が和装をするようになったのは中学生の頃からで、着流しが普段着なのだとか。

デビューまもない頃の洋装の写真が残っているのは、中禅寺のコスプレをしているのではないかと勘違いされるのを避けるためでした。

むしろ著者のスタイルが登場人物のファッションに流用されたといったほうが適切かもしれません。

いたって平凡な本名と天才といわれる理由

北海道出身ということで、一部では筆名の「京極」は北海道虻田郡京極町からとったものと受けとられているようですが、出生地は小樽市であり、京極町由来についてはご本人が否定しています。

本名は大江勝彦さんという、いたって普通の名前。

じつは「京極夏彦」という筆名は小説家デビューが決まった際にデザイン会社の同僚が考えたもの。

それぞれの文字は「京(けい)」「極(ごく)」「夏(ナノ)」「彦(ピコ)」となり、数字の単位にちなんだものです。

しばしば天才、奇才と称される京極夏彦さん。

ミステリー小説界隈ではデビューの経緯が語り草になっているそうですが、このことも天才と呼ばれる理由のひとつでしょう。

なにせデビューのきっかけが、「バブル崩壊で仕事が激減し、暇つぶしに書いた初めての小説で即デビューが決定した」という傑物です。

持ち込み原稿を読んだ編集者の唐木厚さんは、作品の完成度の高さから、高名な小説家が講談社編集部の力量を試すために仕掛けた罠ではないかと思ったとのこと。

一方の京極さんは、すぐさま出版の知らせを受けて、これはドッキリではないかと疑う始末でした。

唐木さんは10枚読んだ時点で出版を決め、20枚読んだ時点で作者が天才であることを確信したといいます。

才能あふれる無名の新人と運命的な出会いを果たした唐木さんをうらやむ編集者は多いかもしれません。

ですが、このエピソードから思うのは京極夏彦さんもまた強運だったということです。


どれほどすばらしい小説を投稿しても、最初の読者となる編集者の眼が節穴では陽の目をみることはないでしょう。

原稿を見る確かな目を持った編集者と一撃でめぐりあえた京極さんも、書き手からすればうらやましい境遇だったに違いありません。

一人の無名の天才と、その才能を正確にはかることができた編集者との出会いは奇跡に近いものだったのかもしれませんね。

京極夏彦は水木しげるを敬愛

2015年、93歳でこの世を去った漫画家の水木しげるさん。

『ゲゲゲの鬼太郎』『河童の三平』などの人気漫画を世に送り出した妖怪漫画の第一人者です。

生前の親交も深く、自宅に「水木庵」なる個人的博物館をつくるほどの大ファンだった京極夏彦さん。

お別れの会では発起人と司会を務め、「水木さんは亡くなっていません」とコメントしました。

水木しげるさんとは共著も刊行しており、アニメ『ゲゲゲの鬼太郎』では脚本を担当したほか、一刻堂役で声の出演も。

また自身のデビュー作を映画化した『姑獲鳥の夏』では水木しげる役を演じています。

水木さんが京極さんに与えた影響ははかり知れず、それが作品群にも及んでいることは間違いないでしょう。


まったくの無名の新人だった京極夏彦さんの登場は、メフィスト賞の創設という副産物ももたらしました。

このことから「第0回メフィスト賞受賞者」とネタにされることもありますが、これも業界に与えた衝撃が大きかったことの証左でしょう。

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